ダンスは踊れません。しかし舞踊は大好き人間。
スーフィーのダンスには神秘を感じるし、バレエ「海賊」の跳躍は見ているだけでヨーロッパ!と思うし。
神社の奉納の舞も、楽しい。

そうなの。
「神秘的なもの」は、たいていくるくる回ってる。(誰やねん)

この本は、途轍もなく教養を備えた神話学者と、ジョンソン政権時の報道官をつとめたジャーナリストの、神話をめぐる勇敢なる対談。

神話を松明のように掲げて、世界を縦横無尽に縫い取っていく。

インディアン・ソサエティーにアメリカ建国。
ウパニシャッドに神道。
旧約聖書にスターウォーズ。

神話を語るに、アメリカほど相応しい場所もないと思ってしまうけれど、
英雄のイニシエイションや犠牲、女神、永遠…

語られ方の違いはあれど、それを物ともしないかたちで世界を包む神話たち。
そして、語られ方の多様性。


確かに、彼らが呟くように、私は信仰がなくとも生きていけている。
それは「神話」学者として論じてしまう距離感にこそ顕著に現れているという気もしなくもないけれど、神話(mythes,myth)に対する誠実な畏怖がそれを感じさせなくさせている。

私は信条はあれど宗教はないし、どんな神聖な場でもお祈りしてしまう不躾ぶりだけど…
畏怖させられてしまう存在(存在でもないのかもしれませんけども)って、あると思うのです。

例え世界に神話を見いださなくても、きっと生きていける。

だけど、「力」と呼ぶにはあまりに茫洋とした経糸と横糸の重なりが不意に文様を
見せるとき、それを踏みつけてはいけないような気持ちになる。
それを逃さずに、でも唯一絶対だと囚われずにしっかり眼をあけていたい。

コメント

HT
2010年7月27日22:41

この本、面白そうだなぁ~。
丁度今図書館から借りてきたレヴィ・ストロース/For Beginnersという本を読みかけていて、
テーマ的に何か通じるものがあるような気がする・・・←勝手な推測w

そういえば、一番最近<神聖>を感じたイスラム・モスクの装飾もくるくる回ってたな!
仏舎利もあの形は・・・回りながら宇宙を目指してるとしか思えんし。
地球も、宇宙そのものも超高速で回転してるらしいからね!
確かにくるくる回っている!!!!!
(単純でスマソ;)


konynon
2010年7月30日7:45

>HTさま

おはようございます!

ストロース面白いですよねー!!

神話の力は少し厚い文庫でも出ているので、よろしければ是非。
大上段からの偉そうな講釈でなく、彼らの真理へ向かう探究心が頁を捲らせてくれました。

昔の人々は宇宙の構成も原理も、知るすべは随分限られていた筈なのに、ひょいっと核を捉えて表現しているところに物凄く惹き付けられるのです。

HT
2010年8月27日17:54

読みました。
面白かったです。
私は回転よりも対比・・・陰と陽・男と女・西洋と東洋・生と死・天国と地獄・個人と社会、などなど二つの極とその間を揺れ動く人間(=生命)とそれを取り込む世界を示す輪、軸と中心、そして輪の外側にあるエネルギーの根源、
それらを隠喩的に表現したのが神話であり、それらが私たちの中にあり、その意識は体内の各器官の生命エネルギーから生み出されるのだ、という概念が印象深かったです。
もう一度、少し期間をおいてから読んでみたいです♪←理解度低い(笑)

キャンベルさんは基本的にオプティミストというか、人間(個人でなく概念上の)への愛が根本にあって、そこが学者さんと違うとこですよね。
まさに<教師>が相応しいです。

対談相手のモイヤーズさんの、凄い知識と鋭い指摘がこの本をとてもエキサイティングなものにしてるんですねきっと。

面白い本を紹介してくれてありがとうですた(人´∀`)

konynon
2010年8月29日19:05

>HTさま

 おひさしぶりですv
 
 対比も神話が機能するうえで欠かせない要素ですね…
 その軸は遺伝子を貫き、内臓にしみわたり、そして人体を通して宇宙をとりまく。

 私は作家の沖方丁さんが薦められてるのを目にして読み始めたのですが、彼も「これは人生を通して何度も読みたいと思わせ、毎度違うことに感動させられる本だ」と仰ってました。
 
 私はよくある「上から目線の学者本」が嫌いなのですが、キャンベルさんは本当に愛がある。
 それでいてそれに盲目でいるわけではないし…そういう態度ごと、素敵な本だと思いました。

 インタビューが単なる予定調和になるかならないか、はたまたエキサイティングになるかならないかは、実はインタビュアーによるところがかーなーり!デカいですよね(笑)