例えばお薦めしたい本に出会えたとして。
「誰に」お薦めできるか選ばなきゃいけない類いの本は存在します。

私の場合、大抵家族や友人なのだけれども、「これだけは!(特に家族には)薦められないけど読んでみてほしい部門最優秀賞」を保っているのが

我孫子武丸「殺戮に至る病」
多分殿堂入り…

でも!!エログロと定義付けるのも躊躇うグロ描写がありますので、それが苦手な人は絶対見ちゃいけない。

まず、読者は眉をしかめながら、ちりばめれた伏線の材料を探す。
そして、読了までの数ページで展開は読者を唖然とさせたまま鮮やかに欺いて激烈に終幕。

結構前の作品ではありますが、社会的病理と、殺戮への傾倒をキルケゴールになぞられた中編の文庫です。

興味を持たれた方は是非ご一読あれ。僻地の市立図書館にも置いてありましたよ。

ただ、読んだあとの後味の悪さは責任とりきれない…(笑)

コメント

nophoto
HT
2010年1月1日19:11

あけましておめでとうございます。・・・って、新年最初のコメがこのトピです(笑)

面白そうだなー。と思って読んでみました。
とても読みやすかったですよ。
グロいことはグロいんですが、なんつーか・・・。描写が乾燥していて無臭なので、気分が悪くなるほどではないです。
哲学関係は明るくないのでよくわからないのですが、プロファイリングの教科書実例として載りそうなほど、
<いかにも>な犯人の<ありそうな>犯行。
ラストのどんでん返しがなければあまりにも定石過ぎたかもしれないくらいでした。

なんとなくですが・・・このテの異常心理ものを読みすぎた読者を煙に巻く楽しみ、のために作者はこれを書いたのかも。
私もすっかり騙されました・・・・。

konynon
2010年1月1日22:46

>HTさま

 新年あけましておめでとうございました(笑)
  
 自分のお勧めしたものを読んでくださったというのがかなり面映ゆいですが、なんだか嬉しいです。ありがとうございます。

 >描写が乾燥していて無臭なので、気分が悪くなるほどではないです。
 
 そうなんですよね、乾燥していて、犯行や心情なども淡々と綴られています。そう意識したのかもしれませんが…
  グロいけれど、あくまで「プロット」に軸を置く推理小説、といった風情でしょうか。

 > <いかにも>な犯人の<ありそうな>犯行。
 私もそう思ったんですが、ふとビックリしたんです。 
 私は「こういうコト」を十分"知っている"ことに。

 こういう病理を、すでに今の社会は理解できるんですよね。ある意味当たり前に。

 確か初版は15年以上前だったように思います。
 こういった"問題"(父親の乖離etc)が社会的認知を完全には受けていないだろう時の作品としては相当衝撃的でしたでしょうし、それをあくまで題材として、ミステリ小説として仕上げたことは凄いことなのだと思いました。

 ラストでのどんでん返し小説といえば、歌野晶午の「葉桜の季節に君を想うということ」とか、今度松さんが演られる湊さんの「告白」、岩竹七海さんの「ぼくのミステリな日常」(←コレ大好きなんです;)、古くはアガサ・クリスティの「検察側の証人」なんかを思い出します。

 私の場合、普通は「プロットの巧みさ」に軸を置いたお話を読むときには読了した後騙された余韻に浸る儀式(笑)があるのですが、この本ではその前に、「は?え?…うぇ…!?」てな感じでもう一度読み返しました。
 やっぱり、家族には中々勧められないです(笑)
 
 こんな記事にナンですが、今年も木村さんのお仕事が弥増しに素晴らしいものでありますように祈念し申し上げまする(^v^)