jeff wall

2008年10月26日 memo
jeff wall
個人的な興味として。
彼は写真家である(健在)。同時に作家でもあり批評家でもある。

jeff wall:「selected essays and interviews」

この本の表紙を見る日本人はある浮世絵を連想するに違いない。
芸術史の素養のある彼の意図するところである。
彼は何枚もの写真を合成し一つの場面を創造する。作家たる所以である。

これは私の勝手な考えだけれど、彼の作品にはぱっと目を引く一瞬の物語性と同時に、じっと見入るうちに気づく寓意が潜んでいることが多い。それは西洋の宗教画のように「あるアイテムによって象徴される」というよりはむしろ思索がある琴線に触れたときにおこる主体に限定されるような視覚の転回に近いと思う(例えばアハ!体験で出てくる写真みたいに)。多くの場合人種差別、貧困などきわめて社会的問題を素材としている。

一枚の「写真」という閉ざされた空間から豊穣な時間と質量とを提示している。
「収めて」いるのではない。もはや枠から(意志をもって)溢れだしてしまっている。
もはや空間演出の域ともいえるけれど、本当に面白い。
現場をのぞいてみたいなぁ。

※こういう物語性のある写真作品は「タブロー写真」というらしい。
日本ではあまり見かけないけれど、触れる機会がないだけなのかな。

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